今回のゲストは、東京大学高齢社会総合研究機構・機構長の飯島勝矢(いいじま・かつや)さん。 飯島さんは2020年より東京大学高齢社会総合研究機構・機構長、および未来ビジョン研究センター教授。老年医学、老年学が専門で、特にフレイル予防を軸とした超高齢社会の総合まちづくり研究、在宅医療・介護連携推進を軸とする地域包括ケアシステムの構築などの研究で実績をあげている。 東京大学高齢社会総合研究機構は2009年に設置され、東大の全学部から高齢社会に精通した研究者が集まっている。 人は高齢になると必ず「虚弱」になるが、「虚弱」という日本語には抵抗がある人も多い。そこでFrailty(フレイルティ)という英語から「フレイル」という言葉を作って、前向きに予防などについての意識を高めてもらうことにした。 フレイルになる原因を探っていくと、ほかの人との関係が希薄になってくることがきっかけになって心身の衰えが始まることがわかってきた。社会性を意識した健康管理が重要だ。 飯島さんが治療を担当しているある一人暮らしのおばあちゃんは「一人だとコンビニ弁当やスーパーの惣菜を買うことが多くなるし、料理を作っても食べきれなくなる」というが、「おばあちゃんの友人が何人か集まって食事すると、ちゃんと残さず食べ切れる」。 メタボやフレイルを予防するためには様々な工夫が必要だが、難しいのは65歳から74歳までの「前期高齢者」。メタボ対策が必要なのかフレイル対策が必要なのか迷う。 飯島さんは「悪玉コレステロールの値は下げる必要はあるが、それだからといって粗食にすればいいというものではない。筋肉が衰えて、これからの生活に支障がでてくる」という。 「薬を飲んでコレステロールの値を抑えるというのも、必ずしもお勧めできない」という飯島さんは「大事なのは、ライフスタイルの前向きなアレンジ」を勧める。努力というよりは「アレンジ」といった感覚で、体を整え、「それでも届かない部分があれば、薬にも頼ればいい」と話す。 生きがいを持っていろいろなことをしてみる。その結果、他の人にも喜ばれ、社会性も高まる。そんなフレイル対策が大切だ。 フレイルには可逆性があると飯島さんは言う。 「フレイルの兆候が出てきたら、もう歳だからなどといって諦めるのではなくすぐ対策に務めてほしいと考えているから、可逆性があると強く訴えている」と飯島さんはその狙いを明らかにする。 日本老年医学会は、日本老年歯科医学会と日本サルコペニア・フレイル学会とともに、「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」を4月1日発表した。 本ステートメントでは、新たなオーラルフレイルのチェック項⽬「Oral frailty 5-item Checklist:OF-5」を紹介した。検査機器がなくてもセルフチェックができる。OF-5の5項⽬のうち、2項⽬以上に該当する場合にはオーラルフレイルに該当する。 5項目とは以下の通り。 ・自身の歯は,何本ありますか? 20本以上は非該当 ・半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか? ・お茶や汁物等でむせることがありますか? ・口の渇きが気になりますか? ・普段の会話で,言葉をはっきりと発音できないことがありますか? 画像 <プロフィール>飯島勝矢(いいじま・かつや) 医師、 医学博士、 東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長、 未来ビジョン研究センター 教授。1990 年東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、東京大学大学院医学系研 究科加齢医学講座 助手・同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016 年より東京大学 高齢社会総合研究機構教授、2020 年より同研究機構教授・機構長、および未来ビジョン研究センター 教授。 ◆内閣府「高齢社会対策大綱の策定のための検討会」構成員 ◆内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員 ◆厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」構成員 ◆厚生労働省「国民健康・栄養調査企画解析検討会」構成員 ◆厚生労働省「安全で安心な店舗・施設づくり...