◆オーディエンスの皆さんからご好評をいただいた〈池城美菜子の名盤ライナートーク〉、今回のシーズン7でも合計3回お届けいたします。まず今回はマライア・キャリー(https://spoti.fi/3oVCIhY )通算10枚目のアルバム『The Emancipation of MIMI』(https://spoti.fi/3sN0k9m )から。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」の構成:毎回アルバムを一枚選定。この作品を選んだ理由、作品の概要と背景、全曲解説、そして、このアルバムを語る/楽しむ上では決して外すことの出来ない3曲――今回の場合は、“It’ Like That”(https://spoti.fi/3SUkAAv )、“We Belong Together”(https://spoti.fi/3zyzp4O )、“Say Somethin’”(https://spoti.fi/3FyCq8Q )についての詳細解説と続きます。以下は、企画発案者/MC池城美菜子からの弁になります。皆さん、是非楽しんで下さい。 ◆マライア・キャリー『The Emancipation of MIMI』:シーズン7の第1回目はマライア・キャリーの10作目『エマンシペーション・オブ・ミミ』を取り上げます。日本では90年代にデビューしたときの「お姫様」なイメージ、そして全世界的に「クリスマス・ソングといえば」な印象が強いマライアですが、そこから先の音楽的・個人的変遷こそ大切なアーティストです。米ソニーの社長、トニー・モトーラとの離婚劇から移籍、停滞、神経衰弱による失態などでピンチに陥っていた00年代前半のマライア。その彼女が、デフ・ジャムに移ってからもともと好きだったヒップホップ/R&Bに大きく舵を切って大成功を納めたのがこのアルバムです。LAリードやジャーメイン・デュプリたちのバックアップを得て、超絶ヴォーカルを聴かせて大復活を遂げました。スヌープやネリー、トゥイスタを招いてのパーティー・チューン、そして、00年代最高のラヴ・ソングと言われる“We Belong Together”を収録。どのあたりが最高を解説しつつ、“We Belong Together”を書いたジョンテ・オースティンや、パーティーで謁見したマライア様の様子などを織り込んだライナートークです。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」のコンセプト:真新しいCDやレコードのフィルムをペリペリと剥がし、中の「盤」の状態を確認、それからライナー・ノーツを厳かに取り出す。直径が12インチ(30.48センチ)もあるレコードであれば、そのスペースだけで曲名、クレジット、歌詞、そして解説が入っていた。いち音楽ファンとして、音楽ライターとして私はライナー・ノーツが大好きだ。すでに購入したあと、聴く直前に読む文章だから、過剰な宣伝文句はいらない。自分が書くときは「いい買い物をしましたね!」の一言を、思いっきり膨らませようと注力する。聴く人が理解を深めてくれるといいな、と願いながら。さびしいことに、ライナー・ノーツ文化が消えつつある。その「つつ」の部分を引っ張るための企画がこのライナー・トークである。それも、すでに名盤として名高いアルバムの聴きどころと功績を30~40分でしゃべり倒そう、が企画意図。一度、名盤と認定されても、時の経過とともに相対的に評価が上下するのがポップ・ミュージックのおそろしいところだ。その厳しさに耐え抜いている名盤を選び、当時の反響、歌詞の意味、そして月日を経たうえでの歴史的意義を、(基本的には)池城美菜子ひとりで話す。なぜ、ひとりかというと、受け手がいるとその人の発言に引っ張られ、なにを言おうとしたかよく忘れるためである。 ◆池城美菜子:1990年代頭より延々とヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カルチャーについての記事の執筆、歌詞対訳、翻訳を手がける。1995~2016年はニューヨークで同じことをしていた。著書3冊、翻訳書2冊。重版がかかったのは音楽以外をテーマにした『ニューヨーク・フーディー マンハッタン&ブルックリン レストラン・ガイド』のみ。文章が難解との評判の『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(2019年 DUブックス)の翻訳で点滴騒ぎを経験した ◆では、今回エピソードが浮かび上がらせていく文脈も少しご紹介しておきます―...