◆〈池城美菜子の名盤ライナートーク〉第6弾、今回は今年2022年にリリースされたナズ(https://spoti.fi/3rYq2oj )の最新作『Kings Disease III』(https://bit.ly/3hpmooh )です。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」の構成:毎回アルバムを一枚選定。この作品を選んだ理由、作品の概要と背景、全曲解説、そして、このアルバムを語る/楽しむ上では決して外すことの出来ない3曲――今回の場合は、“Michael & Quincey”(https://bit.ly/3HxgImT )、“Reminisce”(https://bit.ly/3hshczZ )、“Once a Man, Twice a Child”(https://bit.ly/3FRSq5V )についての詳細解説と続きます。以下は、企画発案者/MC池城美菜子からの弁になります。皆さん、是非楽しんで下さい。 ◆Nas『Kings Disease III』:名盤ライナー・トーク、第6回目はNasの16作目『キングズ・ディズイーズ3(Kings Diseases 3, 以下KD3』です。まさかの2022年度リリース作品。11月11日にリリースされた瞬間に、私が「名盤」認定したアルバムです。プロデューサーのヒットボーイとがっぷり組んだ2020年から始まったキングズ・ディズイーズ・シリーズは3.5部作構成。2020年のKD1、2021年のKD2があって、2022年はEPの『マジック』を挟んで、最終章のKD3という流れです。連作ものはどうしても1作目のインパクトが強く、評価が高いパターンが多いもの。ところが、このシリーズはどんどん評価が高まり、3作目はほぼ完璧で最高評価を得ています。KD1でNasは初めてのグラミー賞を最優秀ラップ・アルバム部門で受賞しているにもかかわらず、です。韻の踏み方、フローの多様性、トピックの切り替え方。意図的にラップのお手本を示しているかのように、引き出しの深さ、多さを徹底的に見せつけます。王様の病とは、欲ばって何事も必要以上に欲しがる、やりすぎてしまうことを指すそう。自分のキャリアを振り返りつつ、人生全体についての考察するのもこのシリーズのテーマです。KD3はその傾向が強く、自分とヒットボーイをマイケル・ジャクソンとクィンシー・ジョーンズになぞらえる“マイケル&クィンシー”や、2022年に再評価ブームが盛り上がったメアリー・J・ブライジの“ユー・リマインド・ミー”を敷いた“レミニス”(思い出に耽る、の意)、老いと向き合った“ワンス・ア・メン・トゥワイス・ア・チャイルド”など、40代後半らしい深い言葉が矢継ぎ早にくり出されます。ライナーノーツよりさらに深く切り込む「全曲解説」をポッドキャストで挑戦した回でもあります。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」のコンセプト:真新しいCDやレコードのフィルムをペリペリと剥がし、中の「盤」の状態を確認、それからライナー・ノーツを厳かに取り出す。直径が12インチ(30.48センチ)もあるレコードであれば、そのスペースだけで曲名、クレジット、歌詞、そして解説が入っていた。いち音楽ファンとして、音楽ライターとして私はライナー・ノーツが大好きだ。すでに購入したあと、聴く直前に読む文章だから、過剰な宣伝文句はいらない。自分が書くときは「いい買い物をしましたね!」の一言を、思いっきり膨らませようと注力する。聴く人が理解を深めてくれるといいな、と願いながら。さびしいことに、ライナー・ノーツ文化が消えつつある。その「つつ」の部分を引っ張るための企画がこのライナー・トークである。それも、すでに名盤として名高いアルバムの聴きどころと功績を30~40分でしゃべり倒そう、が企画意図。一度、名盤と認定されても、時の経過とともに相対的に評価が上下するのがポップ・ミュージックのおそろしいところだ。その厳しさに耐え抜いている名盤を選び、当時の反響、歌詞の意味、そして月日を経たうえでの歴史的意義を、(基本的には)池城美菜子ひとりで話す。なぜ、ひとりかというと、受け手がいるとその人の発言に引っ張られ、なにを言おうとしたかよく忘れるためである。 ◆池城美菜子:1990年代頭より延々とヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カルチャーについての記事の執筆、歌詞対訳、翻訳を手がける。1995~2016年はニューヨークで同じことをしていた。著書3冊...