◆the sign podcastシーズン6では【池城美菜子の名盤ライナートーク】と題したシリーズ・エピソードを合計3回お届けいたします。毎回アルバムを一枚選定、この作品を選んだ理由、作品の概要と背景、全曲解説、そして、このアルバムを語る/楽しむ上では決して外すことの出来ない3曲の詳細解説と続きます。 ◆今回の第3回で取り上げる作品は、トニー・トニー・トニー1993年の3rdアルバム『サンズ・オブ・ソウル』(https://spoti.fi/3E0DGkm )。ピックアップする3曲は“イフ・アイ・ハド・ノー・ルート”(https://spoti.fi/3ftwX8z )、“テル・ミー・ママ”(https://spoti.fi/3ChRohy )、“(レイ・ユア・ヘッド・オン・マイ)ピロー”(https://spoti.fi/3DYOWhn )です。以下は、企画発案者/MC池城美菜子からの弁になります。皆さん是非楽しんで下さい。 ◆Tony! Toni! Toné!『Sons Of Soul』:名盤ライナー・トーク、第3回目にしてR&Bを取り上げます。トニー・トニー・トニーの3作目『サンズ・オブ・ソウル』。トニー・トニー・トニー、通称にトニーズはカリフォルニア州オークランド市の兄弟、ドゥエイン・ウィギンズとラファエル・ウィギンズ(サディークに改名)と従兄弟のティモシー・ライリーで結成された、家族バンド(トリオ)。全員が楽器を操り、プロデュースできるグループで、2作目『リヴァイバル』でメインストリームに出てきた次の本作では、全曲を自分たちで手掛けています。いまでもブラック系のラジオやバーベキュー、結婚式でかかる名曲が詰まったロングセラーのアルバム。数あるR&Bの名盤のなかからこの作品を取り上げたのは、私がこの作品を90年代の後半に花開いたネオ・クラシック・ソウルの起点のひとつだと考えているから。昔のソウルをベースにしながら、当時、終焉しつつあったニュージャック・スウィング、ヒップホップのスクラッチ、それからダンスホール・レゲエの要素も入っています。トニーズは折衷型(エクレクティック)なサウンドを一足早く作っていたグループであり、それがいまでも懐メロで終わらない理由になっています。ピックアップして詳細に解説するのは、日本人でもよくわかる感情を歌った“If I Had No Loot”、明るい失恋ソング“Tell Me Mama”、6分声のムーディーなR&B“(Lay Your Head on My)Pillow”の3曲。また、トリニダード・トバコで録音された理由と、結果としてそこから出てきたもの、ラファエル・サディークのソロ活動、ア・トライブ・コールド・クエストのアリ・シャヒード・モハメッドやビヨンセとの関係なども語ります。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」のコンセプト:真新しいCDやレコードのフィルムをペリペリと剥がし、中の「盤」の状態を確認、それからライナー・ノーツを厳かに取り出す。直径が12インチ(30.48センチ)もあるレコードであれば、そのスペースだけで曲名、クレジット、歌詞、そして解説が入っていた。いち音楽ファンとして、音楽ライターとして私はライナー・ノーツが大好きだ。すでに購入したあと、聴く直前に読む文章だから、過剰な宣伝文句はいらない。自分が書くときは「いい買い物をしましたね!」の一言を、思いっきり膨らませようと注力する。聴く人が理解を深めてくれるといいな、と願いながら。さびしいことに、ライナー・ノーツ文化が消えつつある。その「つつ」の部分を引っ張るための企画がこのライナー・トークである。それも、すでに名盤として名高いアルバムの聴きどころと功績を30~40分でしゃべり倒そう、が企画意図。一度、名盤と認定されても、時の経過とともに相対的に評価が上下するのがポップ・ミュージックのおそろしいところだ。その厳しさに耐え抜いている名盤を選び、当時の反響、歌詞の意味、そして月日を経たうえでの歴史的意義を、(基本的には)池城美菜子ひとりで話す。なぜ、ひとりかというと、受け手がいるとその人の発言に引っ張られ、なにを言おうとしたかよく忘れるためである。 ◆池城美菜子:1990年代頭より延々とヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カルチャーについての記事の執筆、歌詞対訳、翻訳を手...