◆the sign podcastシーズン6では【池城美菜子の名盤ライナートーク】と題したシリーズ・エピソードを合計3回お届けいたします。毎回アルバムを一枚選定、この作品を選んだ理由、作品の概要と背景、全曲解説、そして、このアルバムを語る/楽しむ上では決して外すことの出来ない3曲の詳細解説と続きます。 ◆今回の第二回で取り上げる作品は、Outkast2000年のアルバム『Stankonia』(https://spoti.fi/3BS4TTK )。ピックアップする3曲は“ソー・フレッシュ・ソー・クリーン”(https://spoti.fi/3rgipM1 )、“ミズ・ジャクソン”(https://spoti.fi/3dVgx8j )、“B.O.B.”(https://spoti.fi/3rgiW0t )です。以下は、企画発案者/MC池城美菜子からの弁になります。皆さん是非楽しんで下さい。 ◆Outkast『Stankonia』:ビッグ・ボーイとドレー改めアンドレ3000によるヒップホップ・デュオ、アウトキャストは高校生のときに知り合った友人同士でヒップホップ・デュオを結成、10年後に5作目『スピーカー・ボックス/ラヴ・ビロウ』このジャンル初のグラミー賞最優秀アルバムを受賞する快挙を成し遂げています。20世紀最後の秋に出た『スタンコニア』は、来る世紀のアトランタのヒップホップ・シーンの台頭を予言し、アウトキャストおよびダンジョン・ファミリーの底力を見せつけた作品でした。ダンジョン・ファミリーはプロデューサー・チームのオーガナイズド・ノイズと、シーロー・グリーンもメンバーだったグッディ・モブらと結成したクルー。『スタンコニア』は、ダンジョン・ファミリーとミスター・DJで作った作品であり、同名のスタジオをもって時間を気にせず音楽作りに取り組めるようになったことから、クリエイティビティが爆発したそう。特徴は、ヒップホップ以外の要素を積極的に取り入れた折衷型のサウンドと、南部の生活感情に沿ったリリック。全体を紹介してから、“ソー・フレッシュ・ソー・クリーン”、“ミス・ジャクソン”、“B.O.B”を詳しく解説します。ドラムン・ベースを取り入れた“B.O.B”は、00年代の最高傑作と呼ぶ媒体もあるほどの名曲ですが、おそらく多くが曲のコンセプトを誤解している曲でもあります。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」のコンセプト:真新しいCDやレコードのフィルムをペリペリと剥がし、中の「盤」の状態を確認、それからライナー・ノーツを厳かに取り出す。直径が12インチ(30.48センチ)もあるレコードであれば、そのスペースだけで曲名、クレジット、歌詞、そして解説が入っていた。いち音楽ファンとして、音楽ライターとして私はライナー・ノーツが大好きだ。すでに購入したあと、聴く直前に読む文章だから、過剰な宣伝文句はいらない。自分が書くときは「いい買い物をしましたね!」の一言を、思いっきり膨らませようと注力する。聴く人が理解を深めてくれるといいな、と願いながら。さびしいことに、ライナー・ノーツ文化が消えつつある。その「つつ」の部分を引っ張るための企画がこのライナー・トークである。それも、すでに名盤として名高いアルバムの聴きどころと功績を30~40分でしゃべり倒そう、が企画意図。一度、名盤と認定されても、時の経過とともに相対的に評価が上下するのがポップ・ミュージックのおそろしいところだ。その厳しさに耐え抜いている名盤を選び、当時の反響、歌詞の意味、そして月日を経たうえでの歴史的意義を、(基本的には)池城美菜子ひとりで話す。なぜ、ひとりかというと、受け手がいるとその人の発言に引っ張られ、なにを言おうとしたかよく忘れるためである。 ◆池城美菜子:1990年代頭より延々とヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カルチャーについての記事の執筆、歌詞対訳、翻訳を手がける。1995~2016年はニューヨークで同じことをしていた。著書3冊、翻訳書2冊。重版がかかったのは音楽以外をテーマにした『ニューヨーク・フーディー マンハッタン&ブルックリン レストラン・ガイド』のみ。文章が難解との評判の『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の...