◆the sign podcastシーズン6では【池城美菜子の名盤ライナートーク】と題したシリーズ・エピソードを合計3回お届けいたします。毎回、アルバムを一枚選定。今回の場合、ジェイ・Z(https://spoti.fi/3qzHaT0 )の『ザ・ブラック・アルバム』(https://spoti.fi/3eFg0aJ )です。構成的には、 この作品を選んだ理由、作品の概要と背景、全曲解説、そして、このアルバムを語る/楽しむ上では決して外すことの出来ない3曲――今回の場合は、“モメント・オブ・クラリティ”(https://spoti.fi/3ScoiFT )、“99プロブレムズ”(https://spoti.fi/3LFaCRm )、“ダート・オフ・ユア・ショルダー”(https://spoti.fi/3S3eyhb )についての詳細解説と続きます。以下は、企画発案者/MC池城美菜子からの弁になります。皆さん、是非楽しんで下さい。 ◆「池城美菜子の名盤ライナートーク」のコンセプト:真新しいCDやレコードのフィルムをペリペリと剥がし、中の「盤」の状態を確認、それからライナー・ノーツを厳かに取り出す。直径が12インチ(30.48センチ)もあるレコードであれば、そのスペースだけで曲名、クレジット、歌詞、そして解説が入っていた。いち音楽ファンとして、音楽ライターとして私はライナー・ノーツが大好きだ。すでに購入したあと、聴く直前に読む文章だから、過剰な宣伝文句はいらない。自分が書くときは「いい買い物をしましたね!」の一言を、思いっきり膨らませようと注力する。聴く人が理解を深めてくれるといいな、と願いながら。さびしいことに、ライナー・ノーツ文化が消えつつある。その「つつ」の部分を引っ張るための企画がこのライナー・トークである。それも、すでに名盤として名高いアルバムの聴きどころと功績を30~40分でしゃべり倒そう、が企画意図。一度、名盤と認定されても、時の経過とともに相対的に評価が上下するのがポップ・ミュージックのおそろしいところだ。その厳しさに耐え抜いている名盤を選び、当時の反響、歌詞の意味、そして月日を経たうえでの歴史的意義を、(基本的には)池城美菜子ひとりで話す。なぜ、ひとりかというと、受け手がいるとその人の発言に引っ張られ、なにを言おうとしたかよく忘れるためである ◆vol.1のモチーフ、Jay-Z『The Black Album』:映えある第1回目はジェイ・Zの『ザ・ブラック・アルバム』(2003年)。引退宣言とともにリリースした半自伝的な5作目。ネプチューンズ、カニエ・ウェスト、ジャスト・ブレイズ、ティンバランド、リック・ルービンなど錚々たるプロデューサー陣がバックアップし、(その時は)本気でマイクを置くつもりだったジェイ・Zの渾身のラップが冴え渡る。引退宣言前後のジェイ・Zの動向、彼のライヴ・パフォーマンスをふり返りながら、アルバム全体をナビゲート。重点的に解説するのは、エミネムがプロデュースした“モメント・オブ・クラリティ”、リック・ルービンと一緒にヒップホップ×ロックの歴史を刷新した“99プロブレムズ”、2008年にバラク・オバマ氏が台頭したときに新たな意義をもった“ダート・オフ・ユア・ショルダー”の3曲。 ◆池城美菜子:1990年代頭より延々とヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カルチャーについての記事の執筆、歌詞対訳、翻訳を手がける。1995~2016年はニューヨークで同じことをしていた。著書3冊、翻訳書2冊。重版がかかったのは音楽以外をテーマにした『ニューヨーク・フーディー マンハッタン&ブルックリン レストラン・ガイド』のみ。文章が難解との評判の『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(2019年 DUブックス)の翻訳で点滴騒ぎを経験した。 ◆では、今回エピソードが浮かび上がらせていく文脈も少しご紹介しておきます――。池城は日本で一番ジェイ・Zのライヴを観ている? ジェイ・Zの引退宣言のときにリリースされたのが『ザ・ブラック・アルバム』? ジェイ・Zの最高傑作は『ザ・ブラック・アルバム』ではなく『ザ・ブループリント』? ジェイ・Zはカニエ・ウェストの父親的存在? 当初は“...